迷宮入りする事件たち①「ある社長の失踪と当局が目をつけたヤクザ組織との点と線」
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去年の夏、週刊文春がある変死事件をフィーチャーしたことで、数年前に出版していた拙著『迷宮』が注目されることになった。
その『迷宮』にも収録したが、私の間近で殺人放火事件が起きたのは1993年7月7日のこと。その日、私は七夕暴走をしており、刑事が母が営む居酒屋にやってきていると電話があった時、私は大いなる勘違いをしてドキリとさせられた。暴走していたのがバレたと思ったのである。
「あぁ…少年院…」
と内心で呟き、居酒屋に向かうと全く関係のない殺人放火事件のことで、刑事から数枚の写真を見せられた。見るからにヤクザという風体の男たち。
「この男たちを見たことはないかい?」
刑事の言葉に胸を撫で下ろすと同時に、見覚えのないパンチパーマの男が写った写真に私は視線を落として首を振った。
結局、この事件は時効が成立することになった。
捜査当局と違い、迷宮入りした事件を個人が解決することは不可能と言っても過言はないだろう。
なぜならば、憶測や推測で事件は解決しないからだ。だが、真実に近いであろう情報を見聞きすることはある。そういう世界で私は生きていたからかもしれない。
『迷宮』では、そうしたことには一切、触れていない。それは、私が未解決事件を扱う書籍を出版するとき、最初に決めたことであった。だが…もしも、そうしたものにまで触れていれば、読者の好奇心を大いにくすぐることになったのではなかろうか。