出所者の更生支援について

ある者が過ちを犯し、服役を終え、社会復帰を果たそうとしたとき、それを受け入れる側=周囲の人間や社会のあり方が問われることがある。だが、更生実現の可否を本当に左右するものはなんなのか? アウトローの世界を壮絶に駆け抜けてきた沖田臥竜が、自らの経験をもとに「救われる更生の道」「救われぬ更生の道」を語る――。
沖田臥竜 2022.06.10
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大阪刑務所

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 人生には分岐点というものが存在する。だがそこで必ずしも自身の決断が必要になるかといえば、そうではないだろう。知らず知らずのうちに現在があり、振り返って初めて「あれが分岐点だったな…」と感じることもあるはずだ。

 ただ、どうしても抗えないのが、生まれもっての環境や育てられ方だろう。

 裕福な家庭に生まれた子供と複雑な家庭環境で育った子供が平等かといえば、そうではない。それは親の教育においてもそうだ。親が熱心に子供の将来に向けて習い事をさせるなど、そうした環境に身をおかすことで成し遂げられる夢もあれば、それで潰える才能だってあるはずだ。そこについては、本人の意思とは関係のなく、親の意向が左右しているといえる。

 だがある程度、成長すれば自我が芽生え、自分の意思によって人生を選択していくのは確かで、そんな中で「育ちが悪いから不良になった」と言ったところで、何か考慮されることに繋がることを私は良しとしていない。

 少なくとも私は中学生から鑑別所に入れられるようなクソガキだったが、それを誰かのせいなどと思ったことはない。

 家庭環境でいえば、小学1年生から中学1年生まで決して勉強はしなかったが、塾に通っていたし、小学校3年生からは、ずっと野球をやっていた。

 悪くなったのも、それが楽しくて面白かったからだ。ヤンキーがカッコ良いとさえ思っていた。

 だが、だいたいの子供たちは、遊びたくても決められた門限時間をしっかり守り、やりたくない宿題や嫌だなと思う授業だって受けてきたのだ。大人になってからもそうだ。誰しもができることなら、毎日、楽しいことばかりをやって遊んで暮らしたいだろう。でも、それじゃちゃんとした生活を営めないので、それぞれがストレスや不満を抱えながらも、生きていくために、家族を養うために、他人に迷惑をかけないように、我慢したり辛抱したりして暮らしている。

 対して、それらを一切放棄し、たとえば法律を犯して刑務所に入り、そこで「更生します」「真面目になります」と言って、それだけで簡単に受け入れてもらえる世の中だったら、ずっと道に外れず、真面目にやってきた人間が報われないのではないか。それはさすがにおこがましずぎるだろう。

ー社会が受け入れてくれないからまた犯罪を犯してしまう。それが再犯率を高めている。薬物依存はれっきとした精神障害ー

 そんなことを本気で言っていたら、ずっと真面目に働いている人々に怒鳴られるぞ。

 では、どうすれば良いのか。簡単な話しである。挫けても挫けても頑張るだけだ。道に外れ、それでもやり直したいと思えば、人の何倍も働いて世間からの信用も取り戻し、一から頑張る以外ないのだ。苦しくて当たり前である。辛くて当然だ。

 それを社会復帰の支援がどうのと、したり顔でいう人間を私は心底否定している。自らが頑張る以外、道などは開けないし、開けたとしても、頑張る以外ないのだ。それでも理想通りにいくことなんて、まずないだろう。現実に満足できることなんてそうはおとずれない。

 だからこそ、ささやかなことで喜べたりするのだ。頑張り続けるということは、ささやかな喜びに直結するのである。

 頑張り続けてきた結果、私がたどり着いたのはその極地であった。

 そしてもう一つ。人生とは出会いにもよって大きく左右されることがある。

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