筋金入りと呼ばれた人物が他界
現役時代にたいへんお世話になったある組長が亡くなった。人の死に接するたびに、様々な思いが巡るが、この組長には「とても大事なこと」を教わったことが思い出される。特に今の世を見渡すと、この方が示してくれた、人の道の尊さが身にしみてわかるのだ。
沖田臥竜
2022.04.16
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これまで、私はさまざまな死に接してきた。夜中に突如、電話がなり、すぐさま当時、所属していた本部事務所にかけつけると、血の海の中で横たわる部下が上半身裸で倒れていた。一目見た瞬間に、もう助からないことは一目瞭然であった。殺された方と殺した方は、その日の朝まで2人仲良く、本部内の掃除をしていた。事件はそこから僅か数時間後に起きたことだった。もう助からないと分かっていたが、それでも直ぐに救急車を呼ぶように指示を出し、まだ刺身包丁を握りしめていた加害者を怒鳴りつけ、その手から包丁を手放させた。それは信じられない光景でもあった。
私の舎弟だった人間が、マンションの一室で座ったまま、亡くなっていたこともあった。確かに私は、当時、そういう世界で生きていた。
ここ最近、親しかった人間や家族のような存在だった人の死に直面している。いつも去来するのは、なんとも言えない虚無感だ。